株式会社エムアンドピージャパン (M & P Japan K. K.)
フォエズ アーメド さん
どのような事業をされているのですか?
バッグやポーチなどの皮製品や、Tシャツやエコバッグなどの繊維製品を、日本のお客様から受注し、バングラデシュの契約工場で生産して販売しています。主な商品は、ノベルティグッズです。企業ロゴを入れたノベルティグッズは、セールスプロモーションとして幅広くニーズがあります。これまで、金融業やメーカーといった一般企業や、チェーン展開をするラーメン店などのオーダーに応えてきました。お客様のご要望どおりの製品ができあがるよう、現地と密なコミュニケーションをとりながら、生産管理から輸入卸までを担当しています。
いつから起業を意識されましたか? どのような準備をしましたか?
かつて最貧国ともいわれたバングラデシュで、子どもの頃より、国際機関の人道援助を身近に感じながら過ごしました。やがて、自分も国際機関で仕事をするようになると「援助」での成長に限界を感じ、ビジネスで国を発展させることを考えるようになりました。そんな中で得たのが、来日の機会です。飲食店のアルバイトで生計を立てながら、日本語を習得し、日本企業への就職をつかむことができました。そこで経験を積み、日本のバイヤーのニーズを深く理解することができたことが、今のビジネスの実現につながったと思います。バングラデシュは、中国に次ぐ世界2位の縫製品輸出国です。起業するならそれだ、と考えていました。バングラデシュでの生産に関心のある日本の企業に声をかけてもらったのは、そんな時です。海外生産拠点をバングラデシュに移したいというその企業を、現地のコーディネートなどで支えることになりました。その仕事をしながらも、自分のビジネスにチャレンジしたい気持ちは変わらず、可能性をさぐっていきました。日本向けの商品をつくるには、コストパフォーマンスだけでなく、高い品質を維持できることが何より大事です。バングラデシュで信頼できるパートナーやサプライヤー、工場をさがし、コツコツと実績を積み上げ、日本向けの品質を維持できる生産管理部隊を準備していきました。
起業のきっかけはなんですか?なぜ起業したのですか?
貧困を身近に感じながら暮らす中で、自分の国のために何かしたいという思いが常にありました。自分でビジネスを立ち上げて、バングラデシュで雇用の機会を広げることが、問題解決につながると考えてきました。特に、立場が弱く、搾取されてきた女性の雇用を確保することが重要だと思っていたので、縫製品産業の成長とともに、多くの女性が工場で仕事を得るようになり自由になっていったことには、希望を感じていました。そんな時に、日本企業が日本の日用品雑貨をバングラデシュで販売する事業の立ち上げに、独立も視野に入れながら、携わることになりました。その事業はコロナ禍でのロックダウンなどの影響などもあり、うまく行かなかったのですが、同時に縫製品の生産拠点をバングラデシュに移すことも進めており、こちらはうまく軌道にのせることができました。その後、当初の予定どおり独立し、M&P Japan を立ち上げました。今も、その日本企業とは協力関係にあります。
あなたの事業の強み、アピールポイントは何でしょうか?
母国であるバングラデシュと、15年以上地域に根差して暮らしてきた日本との間で、細やかなコミュニケーションをとりながら生産管理ができることが強みです。そのことによって、高いコストパフォーマンスを生み出しながら、納品後のトラブルはほぼゼロという実績を積み上げ、お客様に信頼を寄せていただいています。具体的には、バングラデシュ側では、日本に到着した後に問題を発見することのないよう、現地でのチェックや再チェックを行う仕組みを作り、全数検品、検針を徹底しています。実際、私のところには、日々工場からトラブルの報告があがってきます。その都度、お客様のオーダーに基づいて細かく指示を出して対応しています。また、日本側では、商品企画から納品まで、トータルバックアップを行っており、お客様それぞれのご要望に柔軟に対応しながら、納品まで様々なフォローを行っています。例えば、初めて革製品を取り扱いたいというご相談を受けた際には、時間をかけて一緒に何度もサンプルを作り、製品化を実現しました。
起業して感じることは?
起業は当然ながら、上手くいくとは限りません。私も、悪い時をいくつも乗り越えてきました。バングラデシュで雑貨店をオープンしてすぐに、コロナでのロックダウンとなりました。ひとりもお客さんがこない日もあり、毎月の固定費がどんどん消えていきました。回復を待ちましたが、悪い状況が長引き、結局閉店することになりました。夢を描いて出店したので、大きな失敗のように感じ、とても辛く絶望的な気持ちになりました。しかし、悪い時を経験してみて、それを乗り越えるノウハウを経験する事が、将来強く生き残れる力につながるのだと今では思います。やってみないとわからないことがたくさんあるのだと思います。その後、縫製事業が好調となり、希望が湧いてきましたが、今は円安の影響を受け、こちらも困難な状況にぶつかっています。利益幅が大きく減少し、苦しみましたが、様々な対策を取って、ようやく回復の道が見えてきました。ビジネスをやっていく上では、よいときも、悪いときもあることを実感しています。それを解決する努力をすることに、やりがいを感じています。またいつか、資金力をつけて、雑貨事業にチャレンジしたいと考えています。起業して良かったと思っていますが、自分の時間が全くなくなったことは、ちょっと残念です。
起業を志す方へのアドバイス
起業する前は、夢がふくらみ、現実とギャップがある場合も多いのではないかと思います。いざスタートしてみると、想定もしなかった課題が続々と現れるかもしれません。残念ながら、大半は失敗で終わってしまうと思います。悪い時がくることを覚悟しておき、失敗した時のことを考えておいた方がよいと思います。ネガティブだと思われるかもしれませんが、自分の経験から、そう伝えたいです。
アドバイザーからの一言「自国のために何かしたい」という強い志が、困難な状況を乗り越えてきているフォエズさんの強いパワーになっています。バングラデシュから来日し、文化の違いやカントリーリスクにご苦労もあったことでしょう。新型コロナや為替の問題と、外部環境の脅威が続きましたが、それら以外でも海外事業の難しさを感じてきたと伺っています。アドバイスとしてある、「悪い時がくる覚悟」の話は、決してネガティブなことではなく、企業経営にとっては大事なことですね。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |