税理士法人 Future Consulting 代表
小澄 健士郎(こすみ けんしろう) さん
創業者が避けて通れないのが創業時のお金の問題。税理士法人フューチャーコンサルティングの小澄先生に創業融資について伺いました。小澄先生は「創業融資はぜひおすすめ!」だそうです。
なぜ創業融資はおすすめなんですか?
①事業の成功率があがる
金融機関に融資を申し込んでも、簡単にお金を貸してくれるわけではありません。事業計画書を作成し、金融機関の審査を通らなくてはなりません。
リスクをとって創業に挑戦するのであれば、金融機関を説得できるくらいの事業プランを練っておくことが成功の確率を上げることになります。しかも、その事業計画書を金融のプロが無料で見てアドバイスをしてくれるのですから、ぜひチャレンジしてみてください。
②金利が安い
創業融資制度の金利は一般よりも安く、さらに、行政の補填もあったりするんです。武蔵野市がサポートしてくれる創業融資制度だと、金利は 1・9%。さらに、武蔵野市が1・6%分補助してくれるので、実質の負担は0・3%です。100万円借りても金利は年間3千円程度。月額250円程度になります。
③次の借入に有利
少額でも行政のサポートなどがある創業融資を借りておき、返済の実績をきちんと積み重ねておくことで、「この人はお金をちゃんと返してくれる人だ」という大きな信頼の実績となります。
そして、本当に資金が必要な時に、今までの返済実績を基礎としてお金を借りる、という流れができます。
④良いプレッシャーになる
事業を新たに始めるのは本当に大変ですから、軌道に乗るまでは「ワークライフバランス」なんて言ってられないケースも多々あります。その時に、「借金を返す」というのも良い意味で発奮材料になることもあると思います。
では、創業融資を受けるにはどうしたらいいでしょう?
創業融資を考える際には、「日本政策金融公庫」か「自治体の制度融資」かの2択から考えるのが一般的です。
「日本政策金融公庫」は金利は若干高いですが審査が早く、前向きに審査してくれる傾向にあります。「自治体の制度融資」は金利は安いですが、「信用保証協会」の審査があり、審査に時間がかかります。
「信用保証協会」とは何ですか?
金融機関からお金を借りる際の保証人として、「信用保証協会」という法人が保証人になってくれるんです。融資を受けて、もし返済できなくなった場合には、この保証協会が代わりに返済してくれるので、金融機関も安心して融資をしてくれるというわけです。
保証協会付きの融資の場合、金融機関に支払う金利の他に、保証協会に保証人になってもらうための「保証料」が必要になります。
おすすめの方法としては、すぐにお金が必要な場合は「日本政策金融公庫」、急がない場合は「自治体の制度融資」を検討されるのがよいと思います。
融資の審査ではどんなことを訊かれるんでしょうか?
前提として押さえておいてもらいたいのが、金融機関は「貸したお金が返ってくるのか?」が重要だということです。「お金は事業の利益から返す」ということになるので、金融機関からの質問は、全てその言葉の後ろに、「あなたの事業は成功しますか?」という確認があるということです。それを踏まえた上で、
①創業の動機
例えば、「飲食業をやるのが夢でしたから挑戦します!」ではなく、「勝てるからやる」という視点が大切なんです。「飲食業は立地が重要だと学んでいる。今回、良い立地の店舗が見つかったため。」など、目標に向けて準備してきて、万全な体制になったと考える根拠を聞きたいわけです。
②創業前の経歴や職歴
この質問は「今回の創業は、あなたの過去の経験が活かされていますか?」ということが聞きたいのです。例えば、「高校・大学と飲食店5店でアルバイトをし、店長を任されていました。」とか、「創業に向けて、ラーメン屋で3店舗ほど修行してきました。」など、過去の経験や経歴が、創業しようとしている事業にどう繋がっているのかを説明できるようにしましょう。
③事業内容
事業内容とは「事業の収益の源となる活動」を言います。「収益を上げるために、このようなサービスを提供して対価をもらいます。」と説明できることが重要になります。
④競合他社との違い
数ある競合他社の中からお客様に選んでもらえないと、事業を軌道に乗せることができません。そのため、「競合に比べどこが優れているのか? 選んでもらえる内容になっているのか?」は創業するにあたり、時間をかけて検討してもらいたい点です。
まずは競合を選定し、自社と競合との価格比較をする。その上で、お客様に選ばれる価値はどこにあるのかを考えましょう。お客様から選ばれるポイントは価格差から考えるということが大切です。
⑤初期費用と収支
事業を始めるには準備が必要です。自分で事業の収支の見込みを立てる際に、初年度は毎月売上が●●万円、経費は〇〇万円かかるから、利益が●●万円位とか計算すると思います。しかし、忘れてはならないのが、最初にかかるお金、つまり、初期費用です。
店舗の敷金や保証金、内装費用、設備など、最初の準備には想像以上にお金がかかります。なので、想定外の出費も想定して「費用は多目に見積もる」ことと「小さく始める」ことが重要です。最初はやりたいことの7割程度実現できればよいくらいの心構えで計画を組むようにしましょう。金融機関もこういったお金の管理についてどう考えているのかを見ていますので、固く計画しておくことが大切です。
⑥個人(メイン通帳)の入出金やクレジットカード
「この人お金に困ってないか? お金にだらしなくないか?」を見られています。例えば、家賃、水道光熱費、携帯電話代など、「毎月ちゃんと決められた期日に支払われているのか? 通帳残金はちゃんとあるのか?」が見られます。創業融資を考えているのであれば、個人通帳やクレジットカードの取り扱いは気をつけておきましょう。
⑦自己資金の原資
「自己資金」というのは、事業を始めるにあたって自分で用意したお金です。法人を設立する際の、「資本金」と呼ばれるものになります。事業を始める時には初期費用が掛かりますし、売上も最初から潤沢に入るわけではありません。そのための準備として、自己資金をどの程度用意しているかを問われます。
その資金の原資、つまり、お金の出どころについても細かく聞かれると思いますので、ちゃんと答えられるようにしておきましょう。創業のために計画的に貯めてきたという事前の準備が重要ということです。
(取材:いなだゆかり)
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