有限会社 雅粒社
中竹 優歩(なかたけ ゆうほ)さん
法律を身近に感じられる雑誌の企画・編集
主に「時の法令」という雑誌の企画・編集を行っています。「より多くの人に法律を身近に感じてほしい」という理念から始まった雑誌で、国会で成立した法律をその立法担当者に解説してもらうというのがメインコンテンツです。サブコンテンツとして、それぞれの専門家に法社会学的見地から執筆していただいています。例えば、毎回違う弁護士がそれぞれ印象的な仕事を紹介する連載などがあります。そのほかは単行本などの校正・編集などを請け負っています。
大学生のインターン期間中に出会った前社長
それまでに「自分で事業をしたい」とか「社長になりたい」と思ったことはありませんでしたが、指示されたとおり動くような働き方は自分に合っていないと思っていました。また、特に就職活動を行なっていなかったため、就きたい職種もイメージはしていませんでした。大学生のインターン期間中に、たまたま後継創業者を探す講演会にいました。そこで講演をしていた人のうちの一人が、前社長でした。年齢だけではなく、難病を患うという困難の中にいながら、とても強い意志と志を持つ方でした。人格的にとても尊敬できる部分を感じ、このような方に出会えることはほぼないだろうと思ったため、一も二もなく「一緒に働く」という選択肢をとったことが、後継創業につながった形です。すぐに社長を交代したわけではなく、新入社員として入り、初めはOJTとして仕事をしていきました。校正は経験が必要な仕事です。元々活字好きのため仕事は向いていましたが、社長になるには仕事の経験も、業界の知識も足りず、会社の全体把握もできていませんでした。3年目で会計と社長を任せられるようになるまでの全ては、最低限の下積みであったように思います。
唐突に訪れた社長後継の時
「一緒に働きたい」という気持ちから入ったため、正直「社長になる覚悟」は薄いものでした。そのため、入って仕事に就いたものの、いつなら社長になるに足る自分と言えるのかずっと考えていました。後継するという前提で入ったものの、それは時期が確約されてのものではなく、さらに先輩社員がいるため、その先輩社員を私が差し置いて社長になるというのは、現実的に思えなかったというのもあります。だいぶ先だと思っていたものが、3年後、ほとんど唐突に訪れました。その時にこれからもう会社と一蓮托生だと、半ば焦るように覚悟を決めました。嫌だと思っていたわけではありませんが、私がこれから会社を守って、尚且つより良くしていけるのか、理念を守りつつ時代にあった形に変化していけるのか、それに足るのかは継いで以降もしばらく悩むことになりました。出版業界は、順風満帆とは言えません。紙の本、しかも雑誌を手に取る人は少なくなる中、昔ながらのやり方を引き継ぐ雑誌でやっていけるのか、不安の中の出発でした。
法律の必要性を考える力と社会を見る目を養う雑誌
まず雑誌の魅力を申し上げたいのですが、社会への見識を広め、深められる雑誌です。メインコンテンツの法令解説は、法律に馴染みない人でも、法律のできる経緯や、その概要を知ることで、法律の必要性を考える力が身につきます。そして社会への問題意識から連載を企画するのですが、最近だと「水の政策」「生命倫理の法的課題」「公文書」など、視座は多岐にわたります。難しい内容ですがわかりやすい言葉で執筆されているため、頭に染み込んでいきます。社会を見る目を養うことができる、社会人にぜひ読んでもらいたい雑誌です。他にも単行本などの校正の請負などをしていますが、じっくりと著者の意図を考えつつ校正する癖がついているため、つい時間をかけすぎそうになって慌てることがあります。こちらに関してのアピールポイントは、業種上自己アピールになりそうなのでやめておきます。
会計を任され、予算削減に悩む
社長を交代する前と後で大きく変わったものと言えば、雑用が多くなったことと、会計を任されるようになったため予算削減に頭を悩ませるようになったこと、最終決定権が託されたことです。これらに良かった・悪かったと区別をつけていませんが、悩み事が多くなったのは確かです。あとこれは単純に個人的なことですが、お金の計算が向いていないのでいつも会計をしているときは気が重くてこれだけは本当に辞めたいといつも思っています。
起業を志す方へのアドバイス
私のようなケースは珍しいでしょうが、「仕事は一人でするものではない」「やってやれないことはない」ということを常に頭に置いています。会社が小さければ小さいほど、コミュニケーションは密になります。その中で一番思い切って足を踏み出すのは、自分です。その自分の大事に思うことが会社にあるかどうかで、苦難を乗り越えられるかが変わるのではないかと思います。
アドバイザーからの一言「後継創業者を探す講演会」がきっかけとは、大変珍しいケースの「創業」です。しかも聴くほうでなく、ご自身も登壇するほうだったとか(笑)他の皆さんと異なる点が多々ありますが、今後はこういうマッチングも増えてくるのではないかということを予感させます。「独立・起業したいけれど、やることが見つからない」、と悩んでいるかたに、特に知っていただきたい事例ですが、ポイントは「自分の大事に思うことが会社にあるかどうか」でしょうか。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |