佐久間甫祐書院
佐久間 明子(さくま あきこ)さん
どのような事業をされているのですか?
従来の一般的な書道教室に加え、海外観光客や海外在住の方向けに、iPadを用いた「タブレット書道」を展開しております。遠隔での指導だけでなく、iOSアプリ「Zen Brush2」を用いた、色鮮やかな文字への装飾ができることも特徴です。また書道が認知症予防の期待もあり、高齢者向けの書道教室も展開しています。昨今、感染予防で高齢者や海外の方との対面指導が難しい時代なので、「タブレット書道」による楽しく・安心な新しい書道を体験してもらいたいです。
いつから起業を意識されましたか? どのような準備をしましたか?
小学2年生よりお習字を習い始め、お習字の先生を夢見ていました。当時の書道の先生が好きだったことや、親からのサポートもあり、上達していきました。次第に周囲から一目置かれ、さらなる創意工夫の意欲が湧きました。川崎製鉄株式会社の海外管理部の在職・退職、2人の出産などを乗り越え、書道を継続しました。子育てが済む頃、ついに長年の夢が叶い、書道の光荘会の師範になりました。同時にECC講師を務め、外国人留学生にも習字を教え始めました。その中で自分だけにしかできない書道の形はないかと、常に考えておりました。インバウンドが流行りはじめていた頃、不動産賃貸経営を行っている父のコンサルタントが、IT や金融・マーケティングに強く、その方のアイデアで、他の書道教室にはない「タブレット書道教室」を思い立ちました。さらに、実家の日本庭園の活用や日本を連想させる備品のアイデアもいただきました。さらに海外向けのPR戦略として、SNS及びインバウンド向けマーケティングを得意とする株式会社ビヨンドと連携し、オンラインイベント『一流師範が教えるおうちで一流書道体験』を国内・海外向けに日本語と英語にて開催しました。
起業のきっかけはなんですか?なぜ起業したのですか?
起業をした理由は、既存の書道の流派にはない、時代のニーズに合わせた取り組みをしたいと考えたためです。英語と書道の両方を教える自分だからこそできることがあると考えました。自分の理念である「書道により世界中の人々と仲良くなり、世界を結び付けたい」を実現させ、オンライン化に伴う英語を用いた世界への発信を成功させたかったためです。現実的に新事業を進める上では、サービスのアイデア・現場で協力してくださる方々の存在が非常に重要でした。前述のコンサルタントの方には事業の着想だけでなく、PR戦略なども現場で指揮もとっていただきました。その弟子で茶道師範の鈴木陽子先生と連携し、着付けや茶道のサービスもご協力いただきました。またネイティブの外国人の生徒にも通訳のサポートをしていただきました。資金繰りの面ではコンサルタントや息子の支援により、感染症対策として持続化補助金・給付金・融資等を活用し、みなさまのご協力のおかげで自分の理想や夢に邁進できました。感染予防のご時世、日本へ旅行できない海外の方が多いと思います。そのような方に、少しでも日本を身近に感じて、思い出にしてほしいです。
あなたの事業の強み、アピールポイントは何でしょうか?
「これ私が書いたんだ!」と海外の方が日本の思い出・お土産として自慢できる作品作りをサポートしています。他の書道教室にはない強みとして、津田塾大学にて英検一級を取得、長年のECC講師の経験から英語での指導経験もあります。そのため日本語が分からない海外の方でも、安心して書道体験ができます。また、外国の方が日本にお越しいただいた際には、浴衣や大正浪漫的袴の着付け·庭園での記念撮影·武士の鎧との撮影など、日本の思い出を深められる特典も用意しております。同書院はITに強く、クラウドでの作品の閲覧や、「タブレット書道」のその場でのプリントアウトもできます。思い出をその場で手に取ることができます。海外への情報発信という点では、サイト「about.me」を利用しており、ヒラリークリントン氏の元秘書や、インドでのタブレット書道の普及に意欲的な方とも接点をもっています。そのため、海外向けの情報発信のスキルについてもお伝えできます。
書道の経験は約50年あり、光荘会師範として
・日本書道美術院 漢字部師範 仮名部十段
・毎日書道展仮名部一般公募9年連続入選
・日書展仮名部第一科
また茶道教授・華道師範の資格もあるので、幅広く日本文化についてお伝えすることもできます。
起業して感じることは?
起業して良かったことは、オンラインでの世界への発信が可能となったことです。これは既存の流派に所属するだけではできないことでした。イギリスより何回も体験してくださった方からは「書きたい字を英語で伝え、日本の書を教えてくれる教室を他に知らない」と大変喜んでいただきました。日本での思い出になってもらえたことがとても嬉しいです。また周りに支えられていることを改めて実感できたことも良かったことです。例えば集客の面では、津田塾大学の先輩が経営するカフェスペースを、ワークショップ·展覧会会場として活用できる機会を提供頂き、そこでは意欲的な多くの生徒さんをご紹介いただき、大変感謝しております。流派による既存の枠組みにとらわれず、自由に企画を構想できることもとても楽しいです。例えばインドネシア語と英語が得意な弟子のご協力で、武蔵小金井のユースホテルにて書道とタブレット書道の体験会を近々開催する予定です。起業で難しいと感じたことは、FacebookのPR投稿で2万人の既読がついた中、実際に申し込みがあったのはお1人だけでした。時差の影響や連絡手段など、より受け手の立場に立つ必要があったと感じました。
起業を志す方へのアドバイス
全て自分でやろうと考えていたら、新事業を進めることはできませんでした。特に自分の苦手を補佐してくださる方の協力は必要不可欠でした。その経験から、普段から周りの方々にどう協力していただけるかを考え続けることが重要と考えます。今後もできる限り相手の立場に立ち、褒めて、来てよかった、また来たいと思っていただけるよう努めたいです。様々な人と組んで事業を行うことで、皆さまも新たな道が開けると思います。
アドバイザーからの一言日本は確実に人口が減少し、国内市場も縮小傾向にあります。今後AIやオンラインで簡素化されたりなくってしまったりする職業もあることでしょう。そのような中、伝統×革新というこのビジネスモデルには、近未来のヒントやキーワードがたくさん含まれています。また、書道を極めた師範の先生が、革新的なビジネスモデルにチャレンジするということ自体大変希少なので、それだけでも強みと言えます。その魅力で素晴らしいお仲間にも囲まれているのですね。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |