株式会社Freewill まちあわせ不動産
中嶋 圭子(なかじま けいこ)さん
どのような事業をされているのですか?
現地集合・現地解散の「まちあわせ案内」というご案内方法でお部屋をご紹介する不動産取引業を営んでおります。オンラインにてお客様のご希望条件をお伺いしました後、お部屋を探してお部屋情報、間取りなど全てオンラインにてご提案いたします。その後、現地待ち合わせにて実際にお部屋を見ていただき、ご契約までサポートいたしております。他に、現在お住まいのお部屋の更新時に、更新した場合と引越しした場合の費用比較のご相談等もお受けしております。
いつから起業を意識されましたか? どのような準備をしましたか?
2019年の秋ぐらいから意識し始めました。不動産会社で働けば働くほど既存の営業方法に違和感を覚え、いつかお客様の負担を軽くする現地集合・現地解散のご案内をする不動産屋さんをやってみたい、そんな夢がぼんやりと浮かんできたのがこの頃でした。2020年3月 突然大きなきっかけが訪れ、半ば勢いで決意しました。決意はしたものの「事業主」という立場はまったくの初めてでしたので、雇用される側と、雇用する側では、何もかもが天と地ほどの差があることを行動を起こしてから痛感しました。そんな当たり前のことも深く考えずに起業を決意しましたので、何かを知れば知るほど不安になってゆきました。尊敬する経営者に相談しましたところ「不安になるのは情報が足りていない時と、悩みが整理されていない時」とのアドバイスをいただき、とにかくまずは自分の悩みを一つ一つノートに書いていきました。何よりも資金不足によるところが不安になっていることがわかり、準備としては少しでもお金を貯めること、他に創業支援金の採択を目標として東京創業ステーションでのカウンセリングを申込みました。
起業のきっかけはなんですか?なぜ起業したのですか?
きっかけは母が癌になったことです。2020年2月、それまで元気いっぱいだった母が突然の癌宣告を受け、年金暮らしの両親を思い私は治療費の心配で頭がいっぱいになりました。相当のお金が必要であり、私が治療費を稼ぎ出すのだと何の根拠もなく傲慢な気持ちで当時の私はそう決心しました。起業はゼロになる可能性もありますが、大きなお金を稼ぎだすチャンスもあります。チャンスがある方にかけようと思いました。次に私を支配したのは「とにかく母のそばにいたい」という子どものような心の底から母を求める気持ちでした。雇用されている以上、自分の勤務日を自分で決めることはできません。世の中の私と同じ状況の人達はみんなどうしているのだろう、そんなことを何度も考えながら私は「誰しもが、会いたい人に、会いたい時に、会いたいだけ会いにいける会社」を作りたくて起業しました。私と似た状況を抱えながらも大切なことをあきらめて一人で泣いている人が沢山いるように思え、そういった人たちを雇用したいと思うようになりました。そういった人たちのお部屋探しも徹底的にサポートしたいと思うようになりました。2020年8月、母は亡くなりました。
あなたの事業の強み、アピールポイントは何でしょうか?
私の事業の強みは「まちあわせ案内」という今まで決して一般的ではないご案内方法をとっていることです。「まちあわせ不動産」とは、お客様に物件を内見いただく際に、現地集合現地解散を基本としている不動産屋です。具体的に現地とは、「物件の最寄駅」もしくは「物件近くの目印になる場所」または「物件の目の前」のことです。「まちあわせ」する理由は、店舗へご来店いただかないことで、物理的・時間的・経済的・心理的負担を徹底的に軽減し、物件近くの様子をゆっくり感じていただきたいからです。そして街を知ることにより、安心して引っ越してきていただくことができると思うのです。また、実際にまちあわせに至るまではオンラインにて相当のやり取りをします。これは他の不動産会社さんでお部屋探しの経験のあるお客様からは、必ずと言ってよいほど驚かれますが、弊社がとても大切にしております部分です。アピールポイントは弊社の正直な思いです。社訓と言っては大げさですが「お客様の人生を祝福する」という言葉を掲げています。引越しは人生の分岐点です。お客様の人生の分岐点を心から祝福したいと思っています。
起業して感じることは?
起業をして良かったと思うことは4つあります。一つめは「人様のお役に立てた」という実感がダイレクトに胸に響くことです。起業前には想像もしていなかった事ですがこの感動には「感謝」という言葉の概念が根本から覆されました。私はどなたかのお役に立ち、そのどなたかから沢山のものを与えられている、そんな気持ちを毎日味わえるというのは、この上ない幸福感です。二つめは、時間が自由になったことです。勤務日を調整し会いたい人に会いたい時に会いに行っています。母はもういませんが残された父と大切な時間を過ごしています。三つめの良かったことは、仕事を追えるようになったことです。組織の中では組織のやり方があり、どうしても仕事に追われていましたが、起業して自分のやりたい方向と方法で自ら仕事を追っていくことができるのは本当にありがたいことです。最後に四つめ、仕事を通して仲間が出来たことです。尊敬する経営者の大先輩にたくさん出会い、その経営者達は私を仲間と呼んでくださるのです。こんなありがたいことはありません。起業をして悪かったことはただ一つ、収入が安定しないことです。支えてくれる大切な人達には感謝しかありません。
起業を志す方へのアドバイス
もし起業に不安を感じるのであれば今のお仕事を続けながら起業するのはいかがでしょうか。私自身ミュージシャンでもあり、もう一つの職業、ブルースハーププレイヤ―として現在も活動しています。どちらが本業、副業の意識はありません。もう一つ、私事ですが「自分は何が好きで、どんな時に楽しいと感じるか」を何度も自問自答しました。この質問で方向性のイメージが掴めたのでおすすめします。
アドバイザーからの一言お勤め時代の違和感をヒントに、ユニークで新しいビジネスモデルが生まれました。違和感や不満・不快は、新ビジネスの種ですね。「不安になるのは悩みが整理されていない時」、というお話にとても共感します。不安や悩みを書き出すと、考えても仕方ないことと行動すれば解決できることとが明確になるので、優先順位も付けやすく気持ちも落ち着きます。ミュージシャンと不動産業を両立。どちらが本業でも副業でもないスタイルは、これからの働き方の一つですね。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |