株式会社一路 「鮨 以とう 一路」
伊東秀和(いとう ひでかず)さん
どのような事業をされているのですか?
2022年8月1日に株式会社一路を設立し、2022年10月28日に吉祥寺エクセルホテル東急の2Fにて、「鮨 以とう 一路」という鮨店をオープンいたしました。
もともと赤坂に「赤坂 鮨 以とう」の本館と別館、渋谷のセルリアンタワーに「鮨 以とう 一貫」というグループ店がありました。赤坂のお店は創業28年になります。その系列店として吉祥寺に「鮨 以とう 一路」をオープンすることとなり、その運営会社である株式会社一路の代表を、私が務めることになりました。
いつから起業を意識されましたか? どのような準備をしましたか?
これまでに起業を意識していたことは、正直ありませんでした。今回も「起業」というよりは、所属する企業グループの方針の流れの中で、私が株式会社一路の代表に手をあげたというのが現実です。
ただ、一度きりの人生、常に何か好きなことに挑戦していたいという気持ちが強く芽生えたタイミングはあります。まだこの業界に入るずいぶん前ですが、14年ほどニューヨークに在住していたことがあります。ちょうどその頃、忘れもしない2001年9月11日に、アメリカ同時多発テロ事件が勃発し、職場がワールドトレードセンターに近かったために、多くの友人や知人を亡くしました。あの時から自分の人生観がガラリと変わり、今のような思いを抱くようになったと思います。
ですから、準備についてもせいぜいオープン前の一年くらいの間にやってきたことがほとんどです。店舗の起ち上げ方はもちろん、会社設立の手続きも何もかも、まったくわからないことばかりだったので、本を読んだり知人の経営者に相談したり、かなり苦労をしました。無駄な動きも多々あったことと思います。そんな中でも、当店のすぐ裏にi-office吉祥寺があり、起業や会社設立の相談ができたのは大きかったです。
起業のきっかけはなんですか?なぜ起業したのですか?
実は私は全く畑違いの業界出身で、「鮨 以とう」とは印刷や広告宣伝を担当する業者として10年以上関わっておりました。その中で、以とうの味や鮨の魅力、コンセプトに憧れるようになり、入社に至りました。
他の創業者の皆様と異なるのかもしれませんが、前述のように、これまで起業については考えたことがありませんでした。しかしグループ全体の流れの中で、東京の西地区で鮨店をオープンすることが決まり、それならばぜひ挑戦してみたいという想いが湧き、自ら手をあげて株式会社一路の代表にさせていただきました。
こうして私が一企業の社長になっているのも、いまだに不思議な感じがしていますが、赤坂や渋谷でご提供している以とうグループの味やコンセプト、雰囲気を、吉祥寺を中心とした武蔵野地区の皆様に広く知っていただきたいという強い思いはあります。
まだまだ経験不足なので、皆様に、特にお客様に教えていただきながら理想に近づけていけるよう日々努力をしています。
あなたの事業の強み、アピールポイントは何でしょうか?
当グループには、時代に左右されない本物の江戸前鮨を継承する本物の技があります。「心をもって 心に伝える 拘りの江戸前鮨」をコンセプトに営業しています。その中で当店の拘りは、ズバリ「お客様の笑顔」です。お客様には、四季の移ろいを感じながら、上質な旬の食材や美酒を味わう至福のひとときを大切にしてもらっています。
さらに、吉祥寺という地域特性を活かし、ご家族様やご友人の皆様ともお気軽にお立ち寄りいただけるようなメニューを意識して営業しています。これまで具体的には、全ランチにドリンク一杯をサービスしたり、平日限定ですが比較的リーズナブルなサービスランチメニューを提供したり、またディナーでは、「父(パパ)の日特別コース」や、「平日夜特別限定 団欒DANRANセット」、「毎週月曜日全ドリンク半額キャンペーンの実施」等を打ち出してきました。このような特別企画を今後もどんどん続け、地域の皆様が喜んでご来店くださるようなお店作りを目指していきます。
お席は、カウンターが11席、半個室が6席と8席、完全個室が12席、一般テーブル席が12席ございます。30名様より貸し切りもできるので、企業様の忘年会や新年会などの宴会でもご活用いただけるようになっています。
起業して感じることは?
当グループは現在、赤坂で28年、渋谷で4年の実績がありますが、吉祥寺では同じようにはいかなかったというのが正直なところです。
この冊子が発刊される頃は当店もオープンして一年を経過していることになりますが、しばらくの間は軌道に乗らず大変苦労をいたしました。吉祥寺には吉祥寺の文化やスタイルがあり、赤坂や渋谷とは異なる部分がたくさんありました。悪かったことではありませんが、勉強不足だったと思います。私ももともと吉祥寺の人間ではなく、その辺がよくわからなかったので、お客様とのコミュニケーションはもちろん、武蔵野商工会議所に入会して他の経営者様とお話したり、仲良くなったり、地域で流行っている飲食店やそのメニューを研究したりいたしました。普段通勤で歩いているときも、ついせかせかと急いでしまいがちなのですが、できるだけ街並みや人々を観察するようにいたしました。これらのことはすべて今でも続けています。
それらが功を奏したかどうかは定かではありませんが、一年を迎える今になり、やっとなんとかやっていけるくらいまでにはなりました。
ご家族がニコニコされてお帰りになったり、常連さんが足を運んでくださったり、宴会の予約が入ったり・・・月並みですが苦労があった分、これらのことが心に染みて大変嬉しく感じます。この場を借りて、本当にありがとうございます。
起業を志す方へのアドバイス
私はまだまだアドバイスできる立場ではありません。また他の起業家や創業者の皆様とは、代表になった経緯も志も違うかもしれません。ただ、一年間やってみて思うことは、気持ちを前向きに、あきらめず工夫を続けることがとても大切だということです。
当店もこれからがさらに大事です。多少の苦労にはめげず、これまでと同じように取り組んでいく所存です。これは自分への叱咤激励でもあります。皆様とご一緒に吉祥寺を、そして武蔵野地区を盛り上げていきたく思っています。
アドバイザーからの一言地域が変われば対象顧客も変わり、やり方も変わる・・・あらためて、そのようなことがわかる事例です。コンセプトやこだわりを維持しつつ、どのように取り巻く環境にアジャストしていくか、この一年の試行錯誤が伺われます。グループ企業の社長として起業した伊東さんには、大変な一年だったかもしれません。ただご自身がおっしゃるように、あきらめず様々な工夫をし続けてきた柔軟性が、今につながっているのでしょう。地域に密着し、今後ますますの繁盛店となってください。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |