パティスリー オーマニフィック
加藤 憲男(かとう のりお)さん
Instagram:aux_magnifique2022
どのような事業をされているのですか?
洋菓子の製造、販売です。洋菓子といってもジャンルでいうとフランス菓子がメインになります。情報が氾濫する現代に於いてはジャンルを限定するのはナンセンスといえるかもしれませんが、クラシックなフランス菓子がベースになっております。
昔から受け継がれてきた味は、料理にも言えることですが理由があります。おいしさ、味の好みの判断基準は記憶にあると思っております。期待される味、それにプラスアルファ現代の解釈と、一番大事なものは愛情。それを加えることで美味しいお菓子になると思っております。
いつから起業を意識されましたか? どのような準備をしましたか?
洋菓子作りの仕事に就いたのも、将来自身のお店を持ちたいという気持ちで入ったので、起業という強い志しということではなく、これから長い修業が続くことへの覚悟といったほうが合ってるように思います。製菓技術を習得している過程で、経営や開業の知識が身についていくものと思っておりました。
ようやく自分の仕事にある程度の自身が持てるようになり、そこで起業(開業)を意識するようになっていました。ですが、起業のための準備よりも、むしろ製菓技術の習得への執着心のほうが勝っていたように思います。
開業を強く意識したのは海外勤務から帰国し、レストランに勤めた頃でした。製菓工場と違いお客様の声が近く、直接味の感想を頂けてそれがとても新鮮でうれしく思いました。
そんなこともあり自身のお店を開きたいと強く思うようになり、そのために必要な条件を考えるようになりました。お客様に信頼していただくには社会的に職人として認められること、職人として説得力のある経験を積むこと。それにはまず、大きな会社(総合結婚式場やシティーホテル)で経験を積む、洋菓子のコンテストなどで結果を残すなど、自分を試す意味でも挑戦しました。特にコンテストで結果を出す事は菓子職人として信頼して頂くためにとても伝わりやすいと思いました。
今回、開業までの間あまり準備の時間が取れませんでしたが、i-office吉祥寺の先生方にアドバイスを頂けスムーズに開業できたと思います。
起業のきっかけはなんですか?なぜ起業したのですか?
高校生時代にアルバイトしていた喫茶店で、マスターがケーキを作ってお店で提供している姿を見て自然とお菓子作りを目指していました。自分で作ったケーキで人を喜ばせたいという思いで洋菓子作りに気持ちが向いたのです。
アルバイトから入ったお店で料理人からのスタートになりますが、そもそも自身のお店を持つことがこの世界に入ったきっかけでした。当時は情報がなく進路の先生もあまり知識が少なく、駅前のケーキ屋さんは白衣を着て白く高い帽子をかぶっていたので自然と飲食店に入りました。
当時、調理の仕事は労働時間が長く休みも少なくハードで、なかなか希望のお菓子作りはさせてもらえませんでした。やがて、パティスリー部門へ入ることができ、新工場の立ち上げにも参加させていただけました。
ある程度自分の仕事にも自信が持てるようになり、外国で自分を試したい気持ちも芽生え、短期間働いたこともありました。
やがて、東京オリンピックが開催される事になり、オフィシャルホテルで働くことで勤務生活を終え、自身の店の開業に向けて切り替えようと思いました。
あなたの事業の強み、アピールポイントは何でしょうか?
商品で言いますと、季節の食材 特にフレッシュフルーツを意識して使用し、お客様にお菓子で季節を感じていただきたいと考えております。全国の生産者から直接取り寄せた旬の果物を主に使用しております。
洋菓子店のお客様のご要望は多岐にわたります。誕生日のケーキを今すぐ用意してほしいという方にはオーダーいただいて30分でご用意したり、会社の記念行事に使いたいとか、オリジナルのケーキでお祝いしたいというかたには柔軟な対応をさせていただいてます。総合結婚式場、シティーホテルでの勤務経験がそういったイレギュラーなご要望に迷うことなく対応させていただけていると思います。
特に、土地柄なのか、地域のお客様の御利用が多く、お客様とのコミュニケーションを大切にし、できる限りお客様のご要望にはお答えできるよう、こちらからご提案するようにさせていただいております。地元の方に可愛がっていただけるように小回りの利いたお店を目指して、常に考え行動しております。
起業して感じることは?
念願の自身のお店を持つことが出来て、うれしいのは当然ですが、菓子職人であると同時に経営者でもあります。商品の仕込み、コスト管理、アルバイトさんのシフト管理や食材の仕入れ、発注はホテル勤務時代からやっていたことなので要領は知れたものですが、家賃、支払い、金銭管理、販促等々、すべてが自分の仕事です。
はじめは想像以上の仕事量にやってもやっても時間が足りず、常に追われているように感じました。ですが、それもすべてが自分に返ってくるという意味では、本当に自分の店なんだなという実感とともに、会社に勤務していた当時には得られない達成感を感じます。
物件の交渉から審査を経て事業計画を立て、融資の申し込み、内装工事の交渉、発注、特に当時はコロナの影響が色濃く、思うように機材が納品されなかったり、職人さんが罹患してしまい工期が後ろ倒しになり、開業時はトラブル続きでした。
そうして迎えたオープンの時は、やっと長いトンネルを抜けられたという思いと、たくさんのお客様に囲まれすべての不安が払拭されたように感じました。
起業を志す方へのアドバイス
起業への取り組み方や準備は、業種や状況により人それぞれです。開業前は資金のことなど不安はつきものです。その不安を軽減する意味でも計画はしっかりしたものを作成するべきです。融資を受けるための事業計画というとやらされ感がありますが、自身の事業のための計画ですからじっくり時間をかけてしっかりした計画を立てることが大切だと思います。
始まってからだとなかなか時間が取れません。事業計画だけではなく、様々なことを想定し準備を進めるための時間を開業前に作ることだと思います。
アドバイザーからの一言洋菓子職人の加藤さん。そもそもこの世界に入った時からご自身のお店を持つつもりだったとのことですから、その想いは強く本物です。単に経験を積むだけでなく、菓子職人としてお客様から信頼を得ることや社会に認められることを考え、そこからの逆算。いわゆる「バックキャスティング」です。総合結婚式場やシティーホテル、コンテストの経験はすべて計画的なもの。今では経営者としての管理能力も兼ね備え、小回りのきくお店として、すっかり地域に馴染んでいます。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |