株式会社ミライターズ
栗田 一正(くりた かずまさ)さん
どのような事業をされているのですか?
個人事業主として中小企業診断士の活動に従事しています。中小企業診断士の活動は人によってさまざまですが、私の場合は、商工会議所などの支援機関を通じて中小企業の経営支援に入ることが大半です。
その傍ら、2022年7月に中小企業のWebマーケティングを支援する会社を立ち上げました。現在はそれぞれの事業を両輪で進めています。
いつから起業を意識されましたか? どのような準備をしましたか?
コンテンツのチカラで中小企業に貢献したい。中小企業診断士の勉強を始めたのは、そんな思いからでした。
きっかけは池井戸潤さんの小説『下町ロケット』。経営資源が限られる中、独自の技術や絶え間ない努力で難局を打開する中小企業の姿に胸を打たれました。
その当時、私は32歳。新聞、テレビ、雑誌・書籍を経て、Webメディアでコンテンツ制作に励んでいた頃でした。しかし、専門はスポーツで、経営に関する知識はゼロに等しいレベルでした。それでは中小企業の役に立てるコンテンツは到底つくれません。その問題の解決手段に選んだのが、中小企業診断士の取得でした。
そのような動機なので「起業」なんてまったく意識していませんでした。それでも、足掛け4年半。2019年に苦労の末に難関資格に合格すると、新たな景色を求めたくなりました。
幸い、世の中は「副業ブーム」で盛り上がり、個人でもスキルがあれば仕事が得られる仕組みができつつありました。最初は副業での活動を考えましたが、残念ながら当時の勤務先は副業に否定的。ならばと一念発起して退職を決意しました。「起業」を初めて意識した瞬間でした。
その後、スタートアップ企業のコンテンツマーケティング統括を業務委託でお引き受けすることができ、開業届の提出に至ります。結果論ですが、中小企業診断士の勉強に費やした時間が「最高の準備期間」になりました。
起業のきっかけはなんですか?なぜ起業したのですか?
個人事業主の開業届を提出した当初は、Webマーケターとして生計を立てるつもりでした。ところが、2020年に新型コロナウイルスが蔓延し、経済活動が停滞。業績悪化の憂き目に遭う中小企業が相次ぎました。そして同時に、自治体や支援機関が経営相談員として中小企業診断士を募り始めました。国をあげて未曽有の危機を乗り越えようとするシーンを目の当たりにしたわけです。
その状況に、私は居ても立ってもいられなくなりました。中小企業の役に立ちたい。その一心で経営相談窓口の担当者に応募。ありがたいことに多くのご縁に恵まれ、中小企業診断士の仕事を継続的にいただくようになりました。それに伴い、経営者と接する機会が増え、「会社設立」のビジョンが明確になっていきました。
会社設立を決めた理由は2つあります。ひとつは会社経営の経験を積むことで、中小企業への支援の質を高めるためです。もうひとつは、情熱を持って会社を経営する社長や圧巻の行動力と事業拡大に挑む社長と同じ時間を過ごすうちに、単純に私も同じ景色を見たいと思ったことです。そして2022年7月、個人事業主の事業の一部であるWebマーケティング支援を行う会社として株式会社ミライターズを設立しました。
あなたの事業の強み、アピールポイントは何でしょうか?
私は中小企業診断士の他に、ITコーディネータや上級ウェブ解析士などの資格を持っていますが、はっきり言って、資格があるだけではたいして役にも立ちません。「経験に勝るものはない」。これが持論です。
私は新聞記者やテレビ番組のアシスタントディレクター、雑誌・書籍の編集者、Webメディアのディレクターやライターなどを務め、多数のコンテンツを制作してきました。その経験で培ったスキル・ノウハウに、中小企業診断士の活動で養った経営・マーケティングの視点を加えることで、「経営目標の達成につながるコンテンツ」を制作できます。この強みをこれからさらに磨き上げていきます。
中小企業は魅力がたっぷりです。大企業にも引けを取らない強みが必ずあります。ところが、経営資源の制約やノウハウの不足などにより、世の中に魅力が届かないこともザラです。そのような中小企業と手を組み、創意工夫を凝らし、大企業が真似できない切り口で商品やサービスを訴求する。徹底的に伴走支援することが私の生業です
起業して感じることは?
「時間不足」の一語に尽きます。私の場合、個人事業主と会社経営の両立を選んでしまったので、なおさらかもしれません。限られた時間の中で、最良な成果を生み出す術を身につけることが当面の課題だと感じる日々です。
とはいえ、会社を設立し、経営している経験は、かなりの価値を実感しています。例えば、会社設立までの一連の流れや社会保険の手続き、決算作業などをひと通り経験したことで、会社運営の細かな知識を体得できました。
これは机上で学ぶ知識レベルとは比較にならないほどの説得力があります。経営者の視点で物事を見る習慣がついたことも大きなプラスです。こうした経験は、中小企業診断士の活動で大いに生かされており、経営支援のクオリティーは間違いなくアップしているはずです。
一方、起業によるデメリットはそれほど感じていません。しいて挙げるとすれば、健康面です。現状のビジネスモデルでは、体を壊した途端に収入ゼロに陥るので、健康診断の定期受診を含め、健康管理には十分に配慮しています。
起業を志す方へのアドバイス
起業前の行動がとても重要だと思います。私の場合、会社設立前に武蔵野市の特定創業支援等事業を受け、事業計画を策定してから事業を開始しました。
周囲の経営者の中には、起業前の時間の使い方が成否を分ける、とおっしゃる方も複数います。これから起業する方々には、支援機関の相談窓口などを活用し、創業計画書をしっかりと作成してから、新たなステージに踏み出すことをおすすめしたいです。
アドバイザーからの一言一見、二つのお仕事が別々のように見えますが、実は相乗効果を発揮していることがわかります。実体験が説得力を増し「経験に勝るものはない」という言葉が心に響きます。当初の計画通りにスタートできなかったかもしれませんが、根底にあった「中小企業の役に立ちたい」というブレない想いが、栗田さんの今を創っていると言えるでしょう。社名の由来は、未来+Write(書く)/Light(灯す)。中小企業の「未来をつづり、未来を灯す」存在でありたいとの想いが込められています。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |