株式会社COAROO
池 成姫(チー ソンヒ)さん
多機能5WAYバッグの製造販売 https://coaroo.co.jp/
吉祥寺発の機能性バッグを目指し中道通りに専門店をオープン
特許取得のベルトの効果で、ショルダーからリュック、前抱えなど、簡単に掛け方を変えられる「コアルーバッグ」の企画、製造、販売、ライセンス事業も行っています。最近は吉祥寺発の機能性バッグブランドを目指し、中道通りに専門店をオープンしました。今後は日本の各地はもちろん世界に向けて、日本の襷(たすき)生まれのラクチンバッグを、一ブランドを超え「良いとこ取りの新しいカテゴリー」として広めていきます。
カバンに応用したアイデアで特許の出願にチャレンジ
この会社を始める前は、日本語と韓国語を教える個人事業を立ち上げたことがあります。その前は、主人の会社(出版社)で翻訳部門を立ち上げ、出版の企画や編集、経理の業務と並行して様々な分野の翻訳と通訳をこなす中、特許翻訳という特殊な仕事に出会いました。難しく硬い専門用語が繰り返される不思議な文章を経験しながら、特許そのものに興味を持ち、独学で仕組みを学びました。
特許は世の中に無い独自なアイデアをビジネスに生かせると確信、もともと人と同じ仕事をすることが好きではなかった性分もあってか、自分もいつか自分のアイデアでビジネスを興したいと思っていました。
そのうち子どもができて、子育てを経験。毎日重い荷物と格闘しながら仕事と子育てを両立することの難しさを痛感。矛先はおんぶ紐やカバンの不便さに当てられていました。大変さを道具のせいにしたかったのでしょうか?(笑)
最初おんぶ紐のアイデアを出願して拒絶通知を受けた時には、ちょうど下の子ができたばかりで対応もできませんでしたが、その後カバンに応用したアイデアを思いつき、出願をして権利化することから始めました。
売れる商品であると証明するためサンプル作りからスタート
始めにアイデアが浮かんで特許を出願した時には、自分が起業をするのではなく、主人の会社の新規事業になれればと思い、名義も主人の会社にしていました。特許が取得できた後はバッグメーカーやスポーツ用品メーカーにライセンス契約を売り込んだものの、どこからも受け入れられず、本業に追われ興味も持てない主人と事業を進めることは難しいと感じました。それならば自分が売れる商品であると証明するしかないと思い、夜な夜なサンプル作りを始めたり、友人の紹介してくれたバッグデザイナーと製品を企画、そのデザイナーの紹介で岡山の工場とサンプル作りを始めました。
一方、事業の可能性を探るために発明学会にお邪魔して、どのように展開すれば良いか学び始めました。
そして発明仲間たちと共同で出展した展示会で大変好評だったので自信を得ることができ、中小企業振興公社に相談に通ううち、起業への決心を固めました。しかし、起業に必要な人、モノ、金、情報への意識がまったくなく、本当にゼロからの一人スタート!
そんな私をママ友だちは自分たちのスキルを生かし、ブランドロゴ作りからホームページ作りなどたくさん手伝ってくれました。
コアルーベルトは汎用性に富み様々な商品への展開が可能
弊社のコアルーバッグは何と言っても使ってみて「便利」「ラク」「簡単」と強く印象付けられ、人に話したくなるアイテム、リピートしたくなる商品であることが強みです。誰もが持っているカバンですが、不便に感じる人も多いです。 様々な掛け方をシンプルな操作で変えられる可能性を持っているコアルーのベルトの構造は、時には分散してもつ、時には前にもつ、肩への負担を和らげるなど、まさに「良いとこどり」のゾーンを獲得したまったく新しい構造です。使い手の利便性が確実であることは、事業の持続性を意味するため、長い目での事業計画を練ることができます。
そして、コアルーはあらゆる用途での開発が可能です。普段使いのショルダーバッグから学生用、ビジネス用、カメラ、PC用、スポーツ、旅行用など。しかも、ビジュアルに関係ない仕組みの問題ですので、ブランドを超えターゲットを超え、様々な商品を生み出すことができる汎用性に富んだアイテムです。最初は広すぎて分かりづらく展開に時間がかかるかも知れませんが、ビジネスの規模に関わる重要なポイントになる要素だと思います。
自分が「これだ!」と思う方向に行ってみたい
仕事に対する価値観はさまざまですが、自分の場合はいわゆる言われた通りの仕事をするのは非常に苦しく感じます。自分が「これだ!」と思う方向に行ってみたいのです。そして決められた部分的な仕事だけを繰り返すことに対しても苦痛を感じます。起業して毎日忙しい思いはしていますが、総合的に俯瞰しながら未来を設計できるので、やりがいも大きいと感じています。色々なことを勉強できたり様々な分野の人を知ることができて、視野も広がりますね。
時間の使い方も縛られることがなく自分で設計することができるので基本的には自由です。ただ、事業が忙しくなると、ご飯を食べる時間も寝る時間も確保できない状態になることも。収益が見込めて組織が持てるようになるまでは相当の間努力と辛抱が必要なので、苦難を乗り越える強さを持っていなければ、苦しんで終わりかも知れません。
自分の場合、多くの困難を乗り越えることで自信につながり自分が好きになるというか、自負心が持てるようになりました。小さいころから「女は文系」と決めつけられたり「勉強さえできれば」と制限されることで発揮できなかった新しい自分を見つけられる面白いプロセスに感じます。
起業を志す方へのアドバイス
起業したからには必ず成功しましょう!自己満足ではなく、趣味でもない。世のためになる商品やサービスを送り出し、多くの人に役立つ結果を出しましょう!と私はいつも自分に言い聞かせています。
でも、あまり気合を入れて戦っても疲れるだけ。笑って楽しませているうちに周りが福を運んできてくれますし、自分もそういう人たちのために頑張る気になって、好循環が生まれます。すべてに感謝できる気持ちが、すべての始まりではないかと思います。
アドバイザーからの一言「飽くなき挑戦」と「行動力」。池さんには、そんな印象を持っています。文頭に、「中道通りに専門店をオープンした」とありますが、それも相談を受けてから「あっという間の出来事」でした(笑)。池さんのマインドと熱意に多くの人が共感し、サポーターになっています。応援団が応援したくなる起業家です。 中小企業診断士・マーケティング塾代表講師 姫野 裕基 |