ことのはな合同会社 Atelier はな緒
平野 智子(ひらの ともこ)さん
https://hanao-architect.tumblr.com/
毎日ワクワクするような場を作る
「永く使える コト・ものづくり」のための循環をつくり、「世界で一番好きな居場所をつくる」をコンセプトに、 おみせ(仕事場)づくり・おうち(暮らす場)づくりをしています。建築デザインの設計はもちろん、「どんな暮らしがしたいか」「どんな働き方がしたいか」「どんなブランドにしたいか」など、ご相談いただいたお客様のモヤモヤを解決し、毎日ワクワクするような場(おうち・おみせ)づくりや世界観づくりをしています。空間設計、ブランディングデザイン、コンサルティングなど、ニーズに合わせて対応しています。
この仕事を誰にでもわかるような表現はなにか
独立する3年ほど前から、起業を意識していました。きっかけとしては、
・仕事もプライベートも両立していきたい。
・成果物をつくり、終わったらおしまいという関係性ではなく、一緒につくる「人」と永く関係性を持ち続けられる仕事をしたい。
・消費するばかりではなく、環境負荷を減らし、永く大切に使ってもらえる「コト・ものづくり」を大切にした活動をしたい。
・消えそうな手仕事や職人さんの仕事を伝えたり、学んだりしつつ、未来につなぐ活動をしていきたい。
・建築・デザインの仕事や職人さんの仕事をもっと広く知ってもらえるような活動をしたい。
ということが主な理由です。
起業の準備としては、自分の尊敬する経営者さんのお話を聞いたり、自分の理想とする企業活動のベンチマークをしたりもしました。リサーチだけではわからず、起業してから、試行錯誤しています。専門性としては「空間の設計」がベースなのですが、専門用語だけで同じ業界の人同士のやりとりに留まらないように、広くいろんな方に伝わるにはどうすれば良いかと工夫をしました。建築設計、デザインという表現から、「おうちづくり・おみせづくり」と表現して、「この仕事を誰にでもわかるような表現はなにか」ということを意識して、日々の活動をしています。
「暮らしの中の仕事」
起業したのは、専門の建築デザイナーというスキルを活かしつつ、「暮らしの中の仕事」というバランスをつくりたかったからです。具体的にいうと、まず、「建築家」「デザイナー」と聞かれて、どんなイメージがあるでしょうか。「建築家の仕事も良くわからないし、建築家の名前は一人も知らない。」ある友人に言われたことです。それだけ馴染みがない職業という印象です。「専門知識を持って相談しやすい人」という関係性をつくりたいと思いました。「暮らしの中の仕事」というのは、家族との時間も大事にしたかったからです。毎日、朝から夜遅くまで職場で仕事をする。という生活を10年以上していました。30歳を過ぎた頃から、「なんのための仕事なんだろう。」という気持ちが強くなりました。満員電車をちょっとでも回避するために、朝は6時半ぐらいには家を出て、夜12時近くに帰宅。家はほぼ寝るだけの場所・・暮らしや仕事場をつくる提案をしている側なのに、毎日夜ご飯を会社のPCの前で食べるという生活を「自分や家族の暮らしももっと大事にしながら仕事もできる日々に変えることができるはず。」と思っていました。これらの両方を叶える為には起業が近道だと思いました。
「ソフト」と「ハード」双方向からのアプローチ
事業の強みとしては、「ソフト」と「ハード」双方向からのアプローチができることです。「ソフト」というのは、場をどう使いたいか。どのように過ごしたいか。「ハード」は、空間や設備的なアプローチです。
最初に、欲しい場や空間、仕事のスタイル、暮らし方をご相談いただいたクライアントさんと紐解きます。
・どんな時間を過ごしたいか
・それにかけられる費用や時間、エネルギー
・実現したいことの優先順位
・今回作り上げたあと、どのくらい時間的に利用するか
・未来の希望
など、そのご希望に応じて必要なことを最初に棚卸しします。
「ソフト」である中身がしっかり固まったら、「ハード」の条件を改めてデザインしていきます。デザインというのは、意匠的なことではなく、要件や要望を満たしてさらに見た目のデザインへつくりあげていきます。ハードだけのデザインでは、後で余分なものをつくってしまったり、実際の利用とはちぐはぐになったりしてしまうので、時間もエネルギーもかかるのですが、この「ソフト」を固めることが大切だと信じています。「おうち・おみせ」をつくる場合の多くは、法律的な必要条件があり、そこをクリアして、その次の段階へと進みます。時間やコストの制限も作り上げる時の要件になります。そこをとりまとめつつ、ワクワクする未来をご相談いただいたお客様と一緒につくる仕事にやりがいがあります。
「人」としての付き合いをベースに仕事ができる
起業して良かったことは、仕事時間を自分で調整できること、「人」としての付き合いをベースに仕事ができることです。
これまでいただいたお仕事はみなさん、前職からのつながりや、友人の紹介、人からのご縁です。営業力が足りないのかもしれないですが、webやHPからの問い合わせは今まで一件もなく、「〇〇さんからの紹介」でお仕事させてもらっています。
「おみせづくり・おうちづくり」が出来上がってからも、やりとりを継続させていただき、様子がわかるお付き合いをさせていただいていることが何よりの財産です。「出来たら終わり」という「おみせづくり・おうちづくり」だったら、生まれなかった次のモノ・ごとがぽつ、ぽつと出来てきています。
例えば、「おみせづくり」をお手伝いしたパン屋さんとは、パン屋さんの開業後、一緒にイベントを毎年共同開催したりしています。「おうちづくり」を担当させていただいた方から、毎年「今年はここ、来年はここ」という感じでお家のカスタマイズを暮らしに合わせてオーダーメードでつくらせていただいてます。起業のデメリットとしては、まだまだ一人での営業なので、やれることが限られていることです。想いはあるのに、なかなか進まない。そんなあれこれを今後メンバーやパートナーを増やしたり、色々な方とのコラボレーションなどで、解決していきたいです。
起業を志す方へのアドバイス
起業はご自身に合うように仕事を自由にカスタマイズできます。得意なことでだれかの役に立つことであれば「仕事」になる可能性があります。
人生の多くの時間を費やす「仕事」をどうするか。試行錯誤の繰り返しですが、トライすればその分ちゃんと未来があると思います。最初の一歩は大変ですが、ちょっとした勇気と失敗は次へのステップと思ってトライすると夢は意外と叶います。
アドバイザーからの一言2018年、i-dream吉祥寺で「クラウドファンディング説明会」が最初の出会いでした。起業して2年、クラウドファンディングで共感を得る手法を学びに来られました。平野さんは建築デザイナーと言う肩書ですが、分かり易くしようとする気持ちから、「おうちづくり」「おみせづくり」という表現を使い、そこにも依頼者に寄り添って一緒に考え作っていく姿勢がよく現れています。吉祥寺の大人のナイトコース探訪「裏ジョージめぐり」楽しみにしています。 株式会社マネジメントブレーン取締役 静間 俊和 |